メーカー製の省スペースPCをできるだけお金をかけず「省電力化」と「静音化」

今回、省電力化と静音化するのは、Lenovoの「ThinkCentre Edge 72 Small」のケースです。
このケースは、幅9.7㎝×奥行36.8㎝×高さ33.3㎝とコンパクトなスリムケースであるため、高さのあるCPUクーラーは入りません。また、電源も一般的なATX電源よりも小さく(細く)、選択肢が多くありません。

このような制限のある中、少し音が気になった下記構成のスリムPCを、できるだけ安く消費電力を抑え静音化を目指します。

CPU性能は「音がうるさいパソコンの静音化に挑戦」したときの約1.6倍になります。


最終的には省電力化と静音化に成功しました。結果だけ知りたい方は、こちら

下記のような流れを想定して開始しました。
  1. パソコン全体の消費電力を低くする
  2. 発熱を抑えるられる
  3. ファンの回るスピードが遅くなる
  4. ファンが静かになる
ファンの回転数、CPUやHDDなどの温度測定は「HWMonitor」を使用しています。また、消費電力の測定は「ELPA(エルパ) 簡易電力量計エコキーパー EC-05EB
」を使用しています。

パソコンの仕様

OS Win10
CPU Core i5-3470S(TDP65W)
マザボ MicroATX(h61)
メモリ 4GB×2(計8GB)
HDD TOSHIBA DT01ACA100
GPU CPU内臓
CPUクーラー 純正(8㎝ファン)
ケースファン 8㎝(吸気)
ドライブ DVDSマルチ
カードリーダー あり

上記構成のDVDドライブ・CPUファン・スピーカーは、今回の挑戦前からケーブルを抜いて使用していました。よって、下記の計測結果より通常は消費電力が高くなります。

この状態の消費電力はシャットダウン状態で1W、アイドル状態で27W、電源をONにした瞬間の最大時で63Wでした。また、youtubeの1080p動画をシアターモードで再生した時の消費電力は35W前後で、最大で48Wでした。尚、CPU(Package)温度は50℃(室温29.4℃)でした。※動画再生時の温度

パソコンの省電力化のためにやったこと

一番手っ取り早いのはCPUをT付きに替えることですが、最新の第6世代(Skylake)でi5-3470Sと同等の性能で組もうとすると、それなりにお金がかかります。そのため今回は、省電力化と静音化を同時に実現できる電源を交換することにしました。

前述したとおり上記構成時の最大消費電力が63Wであったため、90W~180WくらいのACアダプター電源にすることに。※グラボを増設する場合はその分容量の大きい電源にする必要があります。

ロープロファイル対応で補助電源不要なグラフィックボードのGTX750TiとGT730の性能

ACアダプターにはファンが付いていないため、消費電力が下がるのと、ファンが一つ減ることで静かになります。

ACアダプター電源選び

中にはケースに付属の電源もありますが、ACアダプター電源の選択肢は意外と多くありません。

そんな中、候補に挙がった電源がこちらです。
玄人志向 KRPW-AC120W
120W
ABEE AC150-AP04AA
150W
picoPSU-160-XT
160W

今回は、価格の関係上「picoPSU-160-XT」に似た「DC-ATX-160W
」にしました。

上記2つの電源は、ACアダプターがセットになっていない商品もあります。その場合は別途12VのACアダプターを用意します。電源の出力にもよりますが90Wで7.5A、120Wで10A程度のものが必要です。どれを買えばいいかわからないときは、ACアダプターとセットになっている商品を選ぶことをおすすめします。

当方の環境では、12Vケーブルの長さが足りずメモリとCPUクーラーの上を横切る状態になっています。気になる方は、「ATX12V(4ピン)電源延長ケーブル
」や「24pin延長ケーブル」などを使い長さを調節してください。

また、DVDドライブやHDD2台など、SATA電源ケーブルを複数使用する場合は、「シリアルATA×3 電源分岐ケーブル
」や「ペリフェラル電源(大4ピン) - SATA電源(下L型15ピン)変換ケーブル
」などが必要です。尚、複数使用しない場合でもSATA電源コネクタはL型を選ぶことをオススメします。(※詳細はこちら

パソコンの発熱を抑えるためにやったこと

前述したようにCPUをT付きに替えたりすることで発熱を抑えることができますが、予算に制限があるため今回はCPUクーラーを替えることにしました。純正のCPUクーラーから変更することで熱効率がよくなるとともに、静音性の高いCPUファンにすることができます。

CPUクーラーを変更する際に、CPUグリスを塗り直します。そこで、コスパに優れる「ザワード 絶縁タイプ熱伝導グリース MX-4/4g
」を選びました。

CPUクーラー選び

ケースの幅が9.7㎝しかないため、ロープロファイルに対応しているトップフロータイプのCPUクーラーを選ばなくてはなりません。特に制限がなければ、
虎徹 SCKTT-1000
あたりを選んでおけば問題ないでしょう。

今回、候補に挙がったCPUクーラーはこの5つです。
小太刀 リビジョンB SCKDT-1100
34mm
PROLIMA TECH Samuel 17
45mm
GELID SlimHero CC-Shero-01-A
59mm
CoolerMaster 風神スリム RR-GMM4-16PK-J1
59mm
SHURIKEN リビジョンB SCSK-1100
64mm
※メモリなどに干渉しないか必ず確認してから購入してください。

上から全高の低い順になっています。ただし、Samuel 17のみCPUファンが別売りのため、厚さ25mmのファンを取り付けた場合は全高70mmになります。

この中で第一候補に挙がったのが小太刀です。


デザインもシンプルで、ファンのサイズが8cmということもありメモリなどへの干渉もなさそうです。
小太刀の特徴は、その薄さとファンの位置にあります。全高が34mmしかなく、ファンをフィンの下に設置するタイプになっています。

小太刀と最後までどちらにするか悩んだのですが、今回は「Samuel 17」を選びました。

Samuel 17を選んだ理由

見た目のかっこよさ

ケースが透明ではないため付けてしまえば見えなくなりますが、それでも、ケース内にこれが付いているだけで少しうれしくなる。そんな美しさがSamuel 17にはあります。

ファンを自由に選べる

Samuel 17にはファンが付いていないため、120mm(ねじ穴)ファンを用意する必要があります。一見ファンを別で用意するため損をしているように見えますが、静音性の高いファンを選んだり、140mm(120mmねじ穴)ファンなど大型のファンを選んだり自由に変更できます。

ファンレスでいけそう

元々CPUファンのコードを抜いて使用していたので、Samuel 17ならCPUファンを付けなくても大丈夫だと思い、これにしました。

また、マザーボードの後ろからねじ止めするタイプのCPUクーラーなので、プッシュピンタイプが苦手な人にもオススメです。

交換した結果

ここまでにやったこと
  • 電源をACアダプターに
  • CPUクーラーをSamuel 17に
  • CPUグリスをMX-4に
上記3つを交換した状態で、このようになりました。


消費電力はシャットダウン状態で2W、アイドル状態で21W、電源をONにした瞬間の最大時で57Wでした。また、youtubeの1080p動画をシアターモードで再生した時の消費電力は27W前後でした。尚、CPU(Package)温度は44℃(室温29.0℃)でした。※動画再生時の温度

変更前と比べ、消費電力はアイドル時に5W、動画再生時に8W下がり、CPU温度は6℃下がる結果となりました。

ただし、シャットダウン時は交換後のほうが消費電力が1W上がるので、使っていないときは電源タップのスイッチを切ったり、コンセントを抜くなどしたほうがよさそうです。

音に関しては、ACアダプタに交換したことで電源ファンがなくなり以前より静かになりました。

一つ問題があるとすれば、SATA電源コネクタが邪魔でHDDを元あった位置に設置できません。そこで、DVDドライブを外し、そこに設置たところ34℃から37℃に上がってしまいました。(下記画像を参照。現在は分岐ケーブルを追加して元の位置戻しています。)

この他にも、3.5インチのHDDを2.5インチに変更することで消費電力を抑えることができ、SSDにすることで静音化もできます。が、予算さえあればケースを替えて完全ファンレスにすることもできてしまうので今回はここまでとします。

※高負荷を掛けてテストしていません。

番外編

本当はこれ以外にも、ケースファンを静かにしようと
Noctua - NF-B9 PWM 92mmファン
を買ったのですが、80mmのケースファンしか付けられず、無理やりSamuel 17に取り付けたりもしています。

[追記](ギリギリ入ったので)現在はフロントファンとして使用

その状態の画像がこちらです。
暗くて見えにくいですが、コードの長さや取り回しなども参考にしてください。
全体的にコードは短いです。

元の電源を外したあとの穴を、アクリル板で塞いでねじ止めしています。ACアダプターに繋ぐコードは、ケースの上(画像の右)から外に出したかったのですが、コードが短くて届かなかったため下(画像の左)から出すことにしました。

サイズを間違えて買ったnoctuaの92mmファンを、CPUクーラーに結束バンドで固定して使用してみた(ケースファンなし)ところ、ケースファンだけを回したときよりHDDの温度が高くなったため現在は使用していません。CPU温度にほとんど差は見られませんでした。ファンの騒音に関しては、さすがnoctuaといったところです。ただ、せっかく買ったのに使わないのは勿体無いので、付属のローノイズアダプターだけケースファンに繋いで使用しています。この結果、電源をONにしたときにファンが超高速で回転していたのがなくなりました。

HDDは、DVDドライブがあった場所に移動して、無理やり固定しています。(現在はL型を購入したので元の位置にあります。)

全体的にもう少し温度を下げたいので、次は、CPUクーラー用に120mmファンか、排気用のケースファンを追加する予定です。
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